生物

2023年9月20日 (水)

南方の奄美大島みたいな伊豆の海

先日の西伊豆田子でのダイビングで思ったこと。

 

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イソギンチャクの白化

 


ヒメエダミドリイシ



湾内の白崎ってポイント潜ってた時なんだけどね、
ここはサンゴの群生地がある伊豆でも貴重なポイント。
他でも見られるところはあるけれど、
台風で壊滅したとか、規模がそれほど大きくないなど、
伊豆でのエダサンゴ類の繁殖としては、
いろいろな条件がそろわないと、なかなか規模は大きくならない。
そんな中、久々に潜って思ったのが、
『規模大きくなってない?』って感想。
前はそのサンゴポイントに、春先ともなると伊豆特有の海藻が生い茂ることもあり、
サンゴにとっては海藻が擦れたり、絡みついたりで、かなりのダメージを受けてた。
(あくまでもサンゴにとっての話)
ところが近年、この海藻がどこの伊豆の海も育たないわけで、
変わって勢力を盛り返してきたのが、そのエダサンゴ類。

 


テーブルサンゴも群生

 

このヒメエダミドリイシと言う名前のサンゴは、
田子ではだいたい6~12mくらいの範囲に広がってる。
湾内のもう少し浅い場所には、テーブルサンゴの群生も見られ、
その砂地の砂泥感といい、死んだサンゴのガレ場感、そして、
元気に泳ぐチョウチョウウオ系やヤッコ類を見ていると、
『何だか奄美大島の湾内見たい』、と錯覚するほど。
とくにこの、水温の異常にポカポカする陽気と重なり、
もはやここは『奄美と変わらない環境なのかも?』と。

もう何十年も前から漁師とか関係者は『温暖化だよ』、なんて言ってたけど、
ちゃんと真冬になれば14度くらいの水温に下がり、ナマコも見られ、
春になれば海藻も育ち、それが溶ける頃には海の視界が悪くなる。
これらの通常の循環は毎年みられてるわけで、

『いっぺんに何度も上がるわけじゃないんだから、』
と思っていたけど、ここまで来ると、マジで伊豆の海の南方化現象は起きてるのは間違いない。
これは一部の生物にしたら死活問題だろうけど、
伊豆の真冬が厳しく、越冬できなかった生物にとっては朗報なんだろうか?

 

季節来遊魚の事を昔は死滅回遊魚といってた時代。
『黒潮に運ばれ南方系の幼魚が来るけど、死んじゃうのよ』と説明すると、
お客さんの中には、『じゃ何で来るんですかね?』なんて質問する人もいた。
今となっては、それはそれで戦略と言えるんじゃないかなと思う。
ただ、個人的には、冬の凍てつくような澄んだ水と、海藻、
そして、ぐっと少なくなった魚たちの中にも、
真冬特有の生物を見るのが『伊豆の醍醐味じゃん』と思っていたが、
もしかしたら、それが一番難しくなるのかもしれない。。。

 

追伸
もうすぐ来季の島旅スケジュールを更新するね。

 

2023年7月25日 (火)

熱海の海にひそむ、謎のソーダイ虫とは?

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あたみの海岸

 

随分前からその存在は知ってて、先日久しぶりに船長が、
『あそかはカユくてね』って話になって思い出した。
何十年も前の話、
船長に次の潜水ポイントを『ソーダイ根の浅場』と告げると、
「えぇ!そうか~、、、」と少しイヤな顔をする船長。
『なになに、なんかある?』と聞くと、
「あそこは虫が居てカユいだよ、」と船長。
烏帽子岩の岸からは離れてるし、風がある海の上を蚊が飛んでくるとは考えにくいので、
最初は船の上の水たまりにボウフラが発生してるんだと思った。
そしたら船長が、
「違うよ、ビタガ根には居ないんだぜ。デブキンからソーダイに掛けてだけなんだよ」
「蚊じゃないんだよ、ソーダイ虫」

??????

つまりそのカユい虫は、熱海の烏帽子岩辺りの海岸に生息し、
沖のソーダイ根まで飛んできて、
蚊のように血を吸う、得体の知れない、ソーダイ虫!!!
さらにさらに、
「あいつら、そこそこの風だと来るんだよ」
「水面に止まって休むんだぜ」
うっそ、マジ!!!正体を知りたい。

“熱海の漁師、夏の風が弱い日、沖で線香炊く”


毎日溶けるような暑さだけど、あたみは涼しい。
最高気温も低いけど、一番は海風だね。
是非、涼しい海の中に出かけよう!

 


半獣半魚

2023年7月 6日 (木)

イカの「ほえ~」な話。

イカの「ほえ~」な話。

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前回のブログで、
「まだアオリイカ産卵ショー見てない人、ラストチャンスだよ」って話したと思う。
あのスペクタルショーは是非見てよ。マジ感動するから。
産みつけられる卵の綺麗なこと、躍動感あるイカの行動、
コロコロと変わるイカの体表、、、、動画でも確認してね。

ところでそのイカが、なんで色を変えるか?の話もしたと思う。
一つは擬態、一つは威嚇、もう一つは求愛。
きっとこれ以外にもコミュニケーションとして体表を変えることがあると自分は思ってる。
つまり色を変えることで自分(イカ自身)の感情や思いを伝えてるわけだ。
色を変えたりして擬態する物は、水中では結構いる。ヒラメ、カレイなんかは砂に化けるよね。
陸上ではカメレオンが代表選手かな。
でも彼らとイカタコ(頭足類)では、その色の変化の仕方が違うのよ。


初めてイカに驚いたのは、伊豆山の水中や真鶴の水中が、まだまだ海藻(カジメ)がワサワサ生えてた頃。
砂地との境目、ゴロタ混じりの海底でイカを見つけ(アオリイカだったと)、近づいたときのこと。
一目散に横方向に移動するイカが、
パッパッパッて色を瞬時に変えたんだよね。文字通り瞬間的に、1秒以内にパッパッて。
砂→ゴロタ→カジメ、、、、白→まだら→濃い茶色!!。擬態だ。


色を変える理由はわかるとして、この高速変化できる方法は?
最初に話した他にも色を変える生物たちは、その変える方法としてホルモンを使う。
ホルモンは血中を流れているために、色を変えるのに多少お時間を頂くことになる
それじゃぁイカの瞬間変化は無理だ。
ではイカはどのようにして体表を変えるのか?

【筋繊維と繋がった色素胞を伸び縮めさせる】
絵の具の入った小さい小さい袋を無数に持ってると思ってよ。
1つの袋には1色、全部で三色。
おぉぉ、イカはまるでテレビと同じ要領で色を変えてるのかぁ。
テレビのピクセルは赤、青、緑、、でもイカの三色は赤、黄色、茶色なのだ!!
この袋を自在に伸び縮めさせ、色を変えてるんだって。
色素胞についてる筋繊維は20本。筋肉を縮めると袋の面積が広がり、その色が多く見え、
筋肉をゆるめると、袋は点になりその色は薄れて見える仕掛け!!
そのスピード、0.2秒!
まじすげー仕掛け。ほしい、、、この能力。

 


でもちょっと待てよ、なんかキラキラ光る虹色みたいなのもこれか?
物に色が付く方法、見える訳は二通り有り、
一つは色素(インクとか塗料)で、太陽光の1部の色を吸収し、他の色が見える。
もう一つがシャボン玉の虹色とか、玉虫色とかの様に、
太陽光を吸収せず、それを全て反射し、見える角度により色が変わる「構造着色」。
クジャクの羽とか、蝶のはねとかも。

はいはい、ここからよ、イカがすごいの

イカはこの構造着色にも抜かりなく、色素胞の下に虹色素胞の層があるんだって!
(びっくりマークだらけだ)
おっとこれで終わりでない、
さらにその下、虹色素胞の下に白色素胞がある。
白色の層は、どうやら光を散乱させるためにあるようだ
こうなると、イカは体表の色を変えるために生きてる気がしてきた。
でも納得。これがあの綺麗な虹色や白透明な体表の変化なんだね。


是非見て下さい!!

 

追伸
でもイカって色は青色しか見えてないらしい・・・