なかなか良い図鑑
ここに古い図鑑がある。
図鑑と言っても写真や絵だけでなくて、
エッセイも記されなかなか読み応えもある。
昭和61年発刊だから、47年前のもの。
画像にあるのは“南西諸島の魚たち”だけど、
シリーズで“伊豆・房総の魚たち”“伊豆諸島・小笠原の魚たち”がある。
50年近く前の冒険心にあふれた著者のコメントが妙に響くね。
ちょっとご紹介
↓↓↓
『近頃、あなたのお持ちのふたつの目は、遠いところを見ているかい。
朝起きて新聞を見、鏡を見、電車に乗って週刊誌を見、
オフィスでは書類、昼休みには食堂のメニューをにらみ、
長い午後は再び書類の虫になる。あるいは間近のお客と接し、
家に帰れば手の届くテレビを凝視する。
近い物を見せると目は疲れ、遠くを見せると目は休むことが出来る。
目を休ませることは、脳を休ませること。
つまり、休暇とは目を休ませてやることなのである。
さて、遠くを眺めるのに最適の地はどこか。
私なら、陸なら砂漠、海なら大洋を選ぶ。
大洋を実感できる場所と言ったら、離島である。
海流の中に浮かぶ島、私なら、そういう場所を選ぶ。
海について、自然について多くを知る方法はいくつもある。
海洋学や水産学を専門に学ぶ方法も有れば、
航海者や漁業者になり身につける方法もあるだろう。
そして、ささやかではあるが、ダイビングもこれに貢献できる。
楽しみである限り、専門家から見れば取るに足らぬ行為かもしれないが、
それでも海について、いささかは知ることができよう、
学ぶことが出来よう、というものだ。
それが、都会で暮らすあなたになんの役に立つのか、
と聞く人間がいるかもしれぬ。
だがそういう輩に答える必要はない。
そういう人間は、せいぜい毎日近いところだけを見て暮らせばいいのだ。
ゴーギャンがタヒチへ去ったとき、
ルノアールが
「どうしてそんな遠くへ、しかも高いお金をかけて行かなきゃならないんだ」
と言ったそうだ。凡俗はゴーギャンのように踏み切れないが、
せめて年に一、二度は遠くを眺めに行きたい物である。』
トカラのページを開くと、
『トカラの海は宝の海である』