耳をすまして一呼吸
坂村真民詩集より
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『あ』
一途にさいた花たちが
大地に落ちたときに
“あ”とこえをたてる
あれをききとめるのだ
つゆくさのつゆが
朝日をうけたとき
“あ”とこえをあげる
あれをうけとめるのだ
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こんなに多く海にひたって
どれほどの彼らの声をきけたのか
カジメがはげしくゆれるこえ
力強く珊瑚がポリプを開くこえ
岩のすきまにひそむこえ
こんど海にひたったら
たゆたゆ海藻の声さえも
丁寧に一呼吸し
きっとうけとめてみよう