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2016年3月 7日 (月)

『出会いに感謝』に反する

『出会いに感謝』に反する
店の片隅に、
松尾さんから頂いた【出逢いに感謝】。今日はその教えに反するお話。

もともとわたしのようなお客さん商売において、
何よりもまず、『出会ったご縁に感謝することだよ』。と言うことで頂いたもの。

ところが、最近違ったことを思っている自分に気がついた次第。

実家の金沢からよくオフクロが魚を送ってくれる。
一番多いのは手頃なガンド(ワラサ)、フクラギ(イナダ)で、次いでイカなんかも。
当然めちゃめちゃ旨いわけで、お客さんやスタッフにも食べてもらうわけ。
まぁみんな喜んでくれてね。

正直なところ、金沢の鰤とか本ズワイガニとか、高い物ってのは東京でもお金さえ出せば手に入る。
だいたい世の中の一番良い魚介は築地に集まるに決まってるんだからね。
だけど、安〜い地元の庶民の魚とかは、
意外に手に入らない。

それが、メギス(ニギス)やカレイ、ハタハタかな。
これがもう、気絶するほど旨い。本当に旨い。夢に出そうなくらいだ。
たぶん『死ぬ前に何が食べたいか?』って質問されたら、きっと、
『ハタハタの一夜干し焼いたの』て答えるんじゃあないかと思うほど。

話は横道にそれるが、これらは調理も驚くほど簡単。
ハタハタは頭とワタを取ったら、水と醤油でフわぁっと数分煮るだけ。たったこれだけ。
酒とか、砂糖とか何もいらない。そして誰に食べさせても、はじめての人は、
『これ水と醤油』と言うと、
『うそー!』となる。
ただし、条件がある。金沢の新鮮なハタハタと、金沢の醤油を使うこと。

メギスも簡単すぎるのに、申し訳ない位い旨い!
こちらも頭とワタを取る。そして茹でるだけ。
後は大根卸しに酢醤油をかけメギスをかっ食らう!
これが旨くて何本でも入る。まるでサラダのよう。

当然東京でこんな食べ方をしたことがある人はいない。わたしも居酒屋や小料理屋で食べたことない。
マズいハタハタはあるが、、、

話を元に戻す。
つまり、滅多に食べれない安い大衆魚を振る舞ったりするときに思うんだよね、
冒頭の【出逢いに感謝】に反することを。

何かというと、
『このハタハタは絶対私と知り合わなかったら食べることがなかったよ』

『メギスのこんな食べ方、死ぬまで知らなかったかもよ。』と。


これって、俺が言うことじゃないよね。
まるで感謝の押し売りだ。

とんでもない自惚れた気持ちになってる。

感謝するべきは自分。
生まれた金沢の魚を、おいしいと知ってくれる人たちがいること、
お世辞にも、『旨い旨い』と食べてくれる人がいることに、
『みんな喜んどったよ、ありがと』と母にお便りを書けること、

そう言うことに、お前は感謝できないのか!!

【感謝するに値する物がないのではない、
感謝するに値する物を、気がつかないでいるのだ】
                  BY中村天風


追伸》
と、このブログ書いていたら携帯が鳴った、

『もしもーし、旨そうなイワシが入ったけど、送るか?』

さてさて、何して食べるかなぁ。ありがたやありがたや。

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